
そもそも後発白内障とは?
白内障手術では濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズ(IOL)を挿入します。手術時には水晶体の袋(嚢)の一部を残してレンズを固定するのが一般的で、その残された薄い膜が「後嚢(こうのう)」です。
後発白内障は、その後嚢に細胞が増殖して混濁をきたす状態を指します。光の通り道が妨げられるため、術後に視界がにごったりかすんだりする症状が現れますが、これは白内障の“再発”ではありません。
発症時期:術後数ヶ月〜数年後に生じることが多い。
発症頻度:比較的よく見られる現象で、特に若年者ではやや発症しやすい傾向があります。
主な症状
・視界が白くかすむ・もやがかかる感覚:全体がぼんやり見える
・光がにじむ・眩しさ(グレア・ハロー)の増加:夜間の車のライトや街灯がにじむ
・ピントが合いにくい:スマホの文字や字幕が読みづらくなる
・左右差の出現:片方だけ見えにくく感じる場合がある
これらはドライアイや眼底疾患でも生じるため、自己判断せず専門医での検査をおすすめします。
なぜこのような症状に至るのか
手術で水晶体を摘出した際に、後嚢は意図的に残します。これは眼内レンズを安定させるために必要です。しかし、残された後嚢の表面に上皮細胞や残存した細胞が増殖することで膜が濁ってしまうことがあります。これが後発白内障の基本的なメカニズムです。
発症は個人差があり、年齢や眼内レンズの種類によって発症率に差が出ることもありますが、生活習慣で明確に予防できるものではありません。つまり「誰にでも起こりうる現象」であることを理解しておくと安心です。
後発白内障が疑われる場合、以下の検査で診断します。
主な検査項目
・視力検査:見え方の程度を確認します。
・眼圧検査:レーザー治療後の眼圧上昇リスク把握のために重要です。
・スリットランプ(細隙灯)検査:後嚢の濁りを直接観察できる最も有効な検査です。
・必要があればOCT(光干渉断層計):網膜の状態を確認し、見えにくさの原因が網膜由来でないかをチェックします。
検査は短時間で痛みはほとんどありません。安心して受診してください。
治療方法:YAGレーザー後嚢切開術(外来でできる短時間治療)
後発白内障の標準的な治療は YAGレーザー後嚢切開術 です。外来で短時間に終わり、入院の必要はありません。
治療の流れ(簡単)
1.点眼麻酔を行う
2.治療用の顕微鏡を使ってレーザーで後嚢に小さな穴を開ける
3.処置自体は数分で終了。帰宅可能
治療の効果
穴を開けることで光の通りが回復し、多くの方が治療後すぐ、あるいは数日以内に視力改善を実感します。
費用と保険
YAGレーザーは保険適応治療です。自己負担額は加入している保険の条件により異なりますが、高額になるケースは通常少ないです。
合併症と注意点
・一時的な眼圧上昇(治療後に眼圧チェックを行います)
・飛蚊症の増加(レーザー処置後に光の散乱で一時的に感じることがあります)
・まれに網膜関連合併症(網膜剥離など)
当院では治療前後に眼圧や眼底の確認を行い、安全に配慮しています。
治療を受けるタイミングは?
以下のいずれかに当てはまる場合は、受診を検討してください。
・日常生活に支障が出るほど見えにくい(読書・スマホ・運転など)
・夜間の眩しさやライトのにじみが強くなった
・片目だけ見え方が悪くなったと感じる
後発白内障は自然に治ることは少なく、放置すると生活に支障が出る可能性があります。早めに専門医を受診し、必要なら短時間のレーザー治療を受けることをおすすめします。
よくあるご質問(Q&A)
Q. 白内障が再発したのですか?
A. いいえ。白内障そのものが再発したわけではなく、術後に残した後嚢が濁る別の現象(後発白内障)です。
Q. レーザー治療は痛いですか?
A. 点眼麻酔を行うため、痛みはほとんどありません。処置は短時間で終わります。
Q. 治療後、また濁ることはありますか?
A. 一度レーザーで処置すれば再発は一般的にまれですが、個別の眼状態によって異なるため、術後の経過観察が大切です。
Q. 運転はいつからできますか?
A. 個人差がありますが、多くの方は翌日以降に問題なく運転できることが多いです。処置当日の視界は不安定なことがありますので、その日は公共交通機関や介助を利用することを推奨します。
Q. 費用はどのくらいですか?
A. 保険適応の治療です。自己負担額は保険の種類と負担割合によって異なりますので、詳しくは受付へご相談ください。
あおぞらクリニック眼科形成外科の診療について
当院では、後発白内障の診断から治療・アフターフォローまでを一貫して行っています。具体的には次の通りです。
・眼科専門医による丁寧な診察:視力検査、眼圧検査、スリットランプでの観察を行います。
・高度機器による精密検査:必要に応じてOCTや眼底検査で網膜の状態もチェックします。
・外来でのYAGレーザー治療に対応:即日対応が可能な場合もございます(予約状況によります)。
・治療後のフォロー:眼圧や症状の経過を確認し、安全に配慮します。
受診の目安:「白内障手術後に見えにくくなった」「夜間のライトがにじむ」など気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
後発白内障は珍しいものではなく、白内障手術後に起こり得る一般的な変化の一つです。原因は後嚢の混濁で、外来で行うYAGレーザー後嚢切開術で多くの場合改善します。
「最近見えにくい」「前よりかすむ」と感じたら、放置せずに早めの検査を受けることが重要です。迅速に診断・対応することで、以前のような見え方を取り戻せる可能性が高まります。

